近畿放送でブルースに出会う

 高校生の時は近畿放送(現KBS京都ラジオ)の公開番組を見倒した。ともかく金がないので、有名人の歌や演奏を聞きたければラジオの公開番組を見に行くしかなかった。今でも何人か印象的な歌手を思い出す。デビューしたての井上陽水を見た。いかにも受けそうなマイナーコード進行を使ったその曲は、ずっと頭から離れないまま40年以上私の中にある。「傘がない」という曲で、要約すると「肝心な時に雨が降り、傘がないので恋人に会えない」という平凡な歌詞だが、何度も繰り返される「いかなくちゃ、君に会いに行かなくちゃ」というフレーズはその時はずっと耳から離れなかった。まだ無名だった井上陽水のその曲はその後大ヒットとなった。また豊田勇造というギター1本の歌い手が素晴らしかった。MCに味わいがあったし、そのギブソンハミングバードの太い音も魅力的だった。その彼が歌い出したのは、「高野グランドマンションのブルース」という曲で、いわゆるこてこてのブルースコード進行の曲だった。お決まりのコード進行が延々と繰り返されるのだが、その音はお坊さんの念仏のように心に染み入り、河内音頭のように手拍子足拍子をしたくなるものだった。後日別のバンドが似たようなコード進行で演奏していたが、それを聞いた時も何とも言えない感動が体中に走った。これが初めて私がブルースという音楽に出会った時の思い出だった。しかしこの感動は何も私だけではなく、ブルースにはまる人、皆が受ける感情のようだ。その証拠に、ブルースの名曲の一つにThe first time I met the Bluesという曲がある。♪♪誰でも初体験は素晴らしくどきどきするんだぜえYeah!

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