エレキギターと壊れたスピーカー

 当時エレキギターから連想するかっこいい音楽とはロックンロールだった。革ジャンやリーゼントヘアーできめた暴走族とロックンロールはマッチしており、エレキ=不良のイメージがあったと思う。世間に背を向けて悪を貫く暴走族は、爆音を上げるバイクに乗り、ステージに立てばロックンローラーに変身する、そういうイメージがあった。こういう音楽をかっこよく演奏できれば、世の女性は皆、俺の方を振り向くと考えた私のような若者が結構いたと思う。現在おじさんになってしまっても、矢沢永吉のコンサートに行って大騒ぎをする人がいるが、当時のロックンロールはすさまじい印象を若者に与えた。

新御三家として一世を風靡した野口五郎は、歌合戦を勝ち抜いてプロ歌手としてデビューした。この歌合戦で優勝者の彼が選んだのはエレキギターだった。ほとんどの優勝者が当時の高嶺の花であったカラーテレビやステレオを選んだのに、彼はエレキギターを選んだ。その位高価なものだったということである。しかしエレキギターには、ここからさらに金がかかる。それはあの大音響を出すためのアンプ&スピーカーが必要なことである。あれだけの大音響を出せば、やわなアンプではすぐにスピーカーが故障してしまう。私も高校時代に人からエレキギターを借りた。しかしアンプがなかったので大きな音を出せなかった。唯一音を出す方法は自前のステレオのアンプにつないで演奏することだった。スピーカーが吹っ飛ぶので、あまり大きい音は出すなと言われていたが、つい調子に乗って演奏するうちに気が付くとスピーカーは風邪でガラガラ声になった歌手のような音を出していた。

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