まず現場へ行け、昔の上司

 私が入社した頃、私が属する製造現場の上司からは「机に座っている暇があったら現場へ行け」とよく言われた。当初は何の疑問も持たずに現場へ行くものだと思っていたが、よく考えてみると何故現場へ行くのが大事なのかははっきりしなかった。おそらく製造現場で働く人たちは、「机に座って仕事をする=さぼっている」というイメージを持っていたのではないだろうか?「体を動かす=疲れる」ことはよく仕事をしていることであって、「机に座る=楽している」という論法だ。しかし後々必ずしも座って仕事をするのが楽ということもないのがわかってきた。定型業務だけをやるなら、習熟度に合わせて仕事は楽にできるようになるだろうが、知恵を絞って何かを生み出したり提案したりするのは苦痛を伴う。延々と机に向かって悶絶して考え続けなければいけない。

 50才を越えて多くの経営者から仕事のうんちくを聞かされたが、総じて言うと「仕事とは考え抜くこと」となるようだ。昔の現場のおっさんに言われたこととは必ずしも一致しない。昔の上司は現場で体を動かすことだけが生産性向上になると信じていたのだろう。しかしそれでも会社員人生を通じて私は現場に行き続けた。その理由は、一日中机に座っていると血行が悪くなり肩が凝る。少し現場に出て歩くと溜まったモヤモヤ感が減少して気分が良くなる。さらに毎日見ていても変わり映えのしない現場だが、毎日何かが変わっていくので、その変化を感じるのが重要と思った。しかし現場に行く最大の価値は、働く人と話すことだと思う。現場での会話から改善のヒントをもらったのは二度や三度ではない。

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