55才で海外デビュー、マレーシアへ
55才になって海外駐在を経験することになった。正直な所、駐在経験は若いに越したことはないと思っていた。実際若い頃にも海外赴任の話があった。40代前半だったと思うが、上司に呼ばれ海外で新たな生産を始めるにあたり組織長として現地に赴任してほしい旨を打診された。コストを考えても規模拡大の可能性を考えても日本でこのままやっていては新たな展開は望めない、したがって他のビジネスの工場としてすでにインフラが確立されているマレーシアの工場で規模拡大を進める事を会社は決定した、この工場は我々のビジネスの旗艦工場になるので、ついては最初に若い君に行ってもらい将来の為の布石を打って欲しいと考えている、たしかそんな説明だった。私自身も、海外の同業他社がグローバルにビジネスを展開している事は十分知っていたし、日本の生産だけでグローバル競争に打ち勝って海外展開を図るのは到底無理だとも感じていた。
ところが不思議なもので、その数ヶ月後にはこの赴任の話は消えてしまった。理由は最初に行くのは現場に精通して、作業を実際に教えられる人が良いとのことで、ベテランの人が行くことになった。この時「海外で仕事をし海外で生活をする」ことにある種の夢を描いていた私は少し落ち込んだ。しかしその後日本で色々な経験を積み、経営者の走りのような仕事にも就くようになり、時間はどんどん過ぎていった。そしてマレーシアへの駐在員も4代目になる頃にマレーシア工場はビジネスの旗艦工場になり、私はこの工場のトップとして赴任することになった。55才、遅そ咲きの海外デビューだった。
