日本人はオールマイティー
マレーシア工場で多民族間の問題を色々経験するにつれて、日本人の価値というものを見直すようになってきた。勿論マレーシア工場は元々日本の会社が100%出資の子会社なので、経営権を持っているという点で日本人が強い立場を持っているが、ものの考え方や先進国として培ってきた常識などがうまくマレーシアの多民族社会に受け入れられてきたように感じる。マレーシアという複雑な民族間問題を抱える国において、日本人はある意味相撲の行事のような立場を担っていたように思う。
マレーシアでは長らく首相を務めたマハティールという人がいた。元々マレーシアはイギリスに占領され、イギリス文化を強く受けているが、マハティール氏は独立後欧米にすり寄るのではなく、戦後に同じアジアで驚異的な発展を遂げた日本を目指す施策をとってきた。名称も“Look East”施策で、イーストは日本を意味していた。特に1980年代後半以降、マレーシア政府は多くの留学生を日本へ送り、日本語がしゃべれる多くのマレーシア人の育成に力を入れた。実際マレーシア工場にも数人の日本語をしゃべれる社員がいた。このように「日本=尊敬すべき国」という考え方が国全体にあり、経営をこの国で行う場合、この考えが日本企業にとってフォローの風になった。また日本人はものをはっきり言わないので欧米では受け入れられないことが多かったが、マレーシアのマレー系民族はそうした日本人のメンタリティーと相通ずる部分があり、種々の方針を通していく上で助かった。また一方では数字や論理に強い日本人は、多少マレー人を馬鹿にしている中華系の人に対してもにらみが効くところがあった。じゃんけんの関係?
