若者のリーダー

 30代前半で職場が変わった。課長より特命業務を受けることになった。1990年代前半は仕事は売り手市場で、若者は簡単に会社を辞めてもっと割の良い?仕事へ移る傾向にあった。ちょうど私が会社へ入社した頃は、会社は上昇期で種々のビジネスが伸びている状況だった。欧米企業は業績が伸び悩みの状況にあり、欧米に代わって日本が世界経済の牽引役を担うかのような勢いがあった。この頃Japan as No.1という言葉が流行った。

 こういう中で製造会社の大きな悩みの一つが従業員(特に若い入社1~3年目の社員)の定着率の低さだった。回りを見渡せば他社の庭は青く、無限の可能性が転がっているように見えた。新聞にはさまっている求人募集のビラは何枚にもなり、企業同士が若い労働力を取り合うような感じだった。こういう中で私が与えられた新職場での最初の仕事は、少しでも定着率の低下を止めることだった。給料や種々の処遇を変更することなく、若者が長く職場に定着してくれるような方策を考えろということだった。本来技術系の社員として生産性向上や技術開発を行うよう言われてきたのが、急に従業員が居心地よく楽しんで仕事ができるような労務的方策を考えろと言われてびっくりした。そこで上司に「じゃあ当面現場の仕事はできませんがそれで良いのですか?」と確認したらそれで良いとの事で再度びっくりした。それからは社内でお祭りやイベントをやって自分たちの職場を活性化し続けることが私の本業になった。1年半ぐらい私はこんな仕事ばかりを継続した。自他ともに「若者のリーダー」という新たな自分を発見できた貴重な経験だった。

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