京都ジャズ喫茶巡り

 学生時代に私が一日に二度も三度も通ったのが、いわゆるジャズ喫茶であった。どのジャズ喫茶も似た雰囲気で、照明は暗く、部屋の中はもうもうとしたタバコの煙で一杯だった。その中にはテーブルに顔をつけそうに下を向いて小さく顔を振っている人や、難しそうな本を薄明りの中で読んでいるような人がいた。彼らのほとんどは常連のようで、何度も顔を見かけた。店内ではわかり易い曲もかかっているが、時には難解な感じのフリ-ジャズもよくかかっていた。そういう曲がかかると、妙に頭を振ってのっているような仕草をする客もいたが、はたして何人の客が本当に理解していただろうか?当時の音源はすべてレコ-ドで、時々盤面に傷があって同じ部分を繰り返し針が動き、そのたびにブツブツという音がしたが、それも音にこだわる喫茶店のご愛敬といった所だった。どの喫茶店もJBLのような最高級オーディオシステムを入れていた。おそらく数百万円は下らないシステムだっただろう。当時は京都のいたる所にジャズ喫茶があった。特徴的な喫茶店として覚えているのは、まず四条河原町の王将の近くの「蝶類図鑑」。ここは名前の通り、店内に何かの蝶の標本が飾ってあった。それから四条烏丸を少し東に行った所に「マンホ-ル」というジャズ喫茶。ここも名前の通り、今なら地下2階か3階に相当する場所にあった喫茶店だった。その他白川通の京都芸術大学から西に入った「フンジャラ-ム」や銀閣寺のふもとにある「ザックバラン」などユニ-クな喫茶店に足繁く通った。最近になり40年ぶりに熊野神社あたりを歩いたら、当時のままの「YAMATOYA」というジャズ喫茶がまだ営業していた。

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