クレームを通じてビジネスチャンス1
多数の客先でのクレーム処理を通じて大変大きな思い出となる話がある。T社は当時会社の重要ターゲットになっていたが、なかなかこの会社に納入することができなかった。すでに3社の先行納入業者がおり、さらにもう1社から納入するのは仕入れ業務が複雑化するのでT社の製造部門はあまり乗り気ではなかった。そういいながらも営業部の努力で、T社が我々の工場に訪問する機会があった。工場見学終了後に恒例の懇親会が持たれたが、この席で私はT社のH係長の横に座ることになった。せっかくのチャンスだと思い、自分が製造で苦労している事、同業他社に負けない努力をしていることなどを一生懸命語ったような気がする。そして結構その場でHさんとは良い関係を築けた。
その後T社との関係は良い方向に進み、遂に我々の製品をT社に納入できるようになった。ところが数回目の納入で、製品に異物が入っていることがわかり、それを取りにT社まで行った。その席でわかった事は、Hさんの立場は係長だが、実質的にこの人がNoと言えば絶対に納入ができないというキーマンであるということだった。その場で自分の人格を賭けてがんばりますのでもう一度使って下さいという話をしたら、「今度だけだぞ」と言われ納入が再開された。しかしその後何度かミスを連発して、私はT社に夜がけ朝がけでHさんに会いに行った。本来ならそれだけミスを連発すれば納入停止になる所だが、何故か私の真摯なクレーム処理を通じて私そして我社に理解を示してくれたようだ。かくして私は重要ターゲットのカギを握る鬼軍曹の懐に入った。雨降って地固まる。
