クレームを通じてビジネスチャンス2

 私は製品クレームを通じて結果的には客先のキーマンの懐に入ることができた。相変わらずクレームは続いていたが、ともかくすぐ行く~状況を聞く~改善することで少しずつだが良くなっていった。しかし同業他社製品に比べ製品のバラツキが大きく一流品とは言い難かった。色々考えるが原因がわからない。遂にはノイローゼになりそうな状況になった。その時に上司から入社時に言われた言葉が浮かんだ。「悩んでいるなら同業はどうしているのか客先に聞いて来い!」という言葉だった。たしか材料認定のキーマンのHさんは何社かの工程を見ている。Hさんならこの話を聞き入れてくれるだろうか?思い悩んだあげく、給料日の夕方私はHさんに電話をした。「〇〇です。御社にさらに良いものを納入したい。ついては同業のA社の話を聞かせてもらえないでしょうか?」私の電話に一瞬Hさんは絶句した。30秒ほどの沈黙の後、Hさんは「明日は土曜日だな。16:00にネクタイを外して工場へ来い」という返事をされた。翌日工場事務所に着くなり、Hさんは「今から君の製品をどう使うか我々の工場を見せてやる」と言われた。それまで客先の工程を見た者は誰もいなかった。小一時間の工場見学で我々の製品の使われ方がしっかり理解でき、Hさんが特に強調されていた内容についても理解できるようになった。そしてその後日本料理屋の個室でしゃぶしゃぶをつつきながら、私はA社の工程がどうなっているか教えてもらった。今思えば完全なスパイ行為だったが、よくぞHさんは若い向こう見ずな私を受け入れてくれた。当時給料は手渡しだった。給料の半分を持って客先に行った。私の初の接待だった。

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