政治家との交渉
マレーシアでは政治家もしくは政治家につながる各省庁の役人のトップと面談する場を何度か経験した。私がマレーシアに赴任した頃には、マレーシアの現地法人は創業以来すでに1000億近い規模の投資を行っていた。これは欧米地区の投資と比べても遜色ないレベルだが、マレーシアに対する投資としてはトップクラスのものだった。このためマレーシアの省庁特に投資庁とは特別な関係を築いてきた。投資庁と外資系企業との間での交渉として最も重要な点は、将来にわたる投資拡大とそれに見合う税制優遇等のインセンティブだった。私が現地法人トップにいた間も何度も話題になった。この投資庁の長官はたまたま前職が大阪のマレーシア投資庁の出先機関の所長だったのも良かった。一緒に食事をして、(内緒で)酒も飲んだ関係でフランクに交流を持つことができた。また投資庁の上部組織の大臣が日本とマレーシアで投資説明会を設けたが、その席にも何度も呼ばれた。気恥ずかしい話だが、投資額にしたがって席順が決められるが、私は大臣から3番目に近い席に座らされた。また大臣が日本へ来た日に日本企業と話をしたいとのリクエストがあった。たまたま株主総会でトップが出席できないという事で私が代理で応対させてもらうということもあった。またマレーシアでは各州知事が首相になるケースが多いが、私の会社のあるセランゴール州知事に合わせてもらうチャンスもあった。残念ながらその人は途中で失脚したが、場合によればマレーシア首相と懇意になるチャンスでもあった。このようにマレーシアでは現地トップの権限を越えるような経験をさせてもらう事ができた。
