北海道へ行く
バイト先のG楽器でIさんという方と知り合った。彼の話は味があり興味深く聞かせてもらった。中でも2つ興味深い話があった。一つは音楽特にブルースの話、もう一つは北海道旅行の話だった。彼はそれまでに冬の北海道に3度行ったそうだ。一旦出かけると1ヶ月ぐらい帰ってこなかった。通常北海道旅行と言うと、春から夏にかけて行くイメージがある。初夏には美しい花が見られ、また夏は避暑地としてのイメージだ。しかしIさんは違っていた。「冬の北海道は変わった奴に会えるねん」と彼は言った。冬の北海道に行く場合、目的を総称すると3白と言うそうだ。3白とは「雪」と「白鳥」と「鶴」を言う。確かに3白は美しいが、猛烈に寒い冬の北海道に行く人はやはりどこか変わっている。人間好きな私はその話を聞いて無性に北海道へ行きたくなった。当時青函連絡トンネルはなく、京都から青森まで特急白鳥で10時間ぐらいかけて行き、「津軽海峡冬景色」でおなじみの青函連絡船に乗り函館へ渡り、そこから特急で札幌まで行った。泊りはすべてユースホステルを使う安い旅をした。途中各地で音楽に関わる場所を回った。ジャズ喫茶は北海道の大都市に何軒もあった。「全国ジャズ喫茶マップ」が役立った。札幌ではいくつかのライブハウスを探し回った。今のようにグーグルがなく、口伝えで住所を聞きながら回った。ユースホステルには変わった奴がいて話が面白かった。北海道のユースホステル発の曲も教えてもらった。今も歌詞を覚えている。アメリカのミュージシャンが広い荒野を放浪するという話を読んだり聞いたりしたが、北海道の旅はまさにそういうイメージだった。毎回帰り際に後ろ髪をひかれた。
