音楽好き兄弟と出会う

 楽器店で働いている時に社会人のミュージシャンと出会うチャンスが訪れた。私が勤めていたG楽器によく来るW兄弟がいた。お兄さんの方は中小企業の社長さんで、時々大変高級な楽器を買いに来た。エレキギターで有名なメーカーと言えば、当時も今もギブソンかフェンダーであったが、ギブソンではSG、レスポール、ES335などの超有名楽器を持っていたし、ストラトキャスターやテレキャスターというフェンダーのギターも揃っていた。これにフェンダーのエレキベースやマーチンのアコースティックのD28やD45という高級楽器も入れて全額で多分数百万円は下らない楽器があったと思う。お兄さんは一流企業の下請けの会社を経営しており、景気が良い時には一流企業からまとめて仕事が入るようで、時としてポンと大枚を出して高級楽器を買っていった。学生であった私にとって夢のようなことだったが、いずれは自分もあんな楽器が買えたら良いなと思っていた。ある日バイトの帰りに兄弟の家へ行き楽器を見せてもらい弾かせてもらった。なかなか畏れ多く思い切って弾く勇気が出なかったが、兄弟は大音響で演奏する事に慣れていて、また大変なテクニックの持ち主だった。この時に初めてエリック・クラプトンのクロスロードという曲のコピーを聞かせてもらった。どちらかと言うとずんぐりむっくりのお兄さんさんからは想像できないようなその演奏は当時レコードで聞くクラプトンそのものの演奏だった。後々私はこの演奏をCharのコピーで聞いたが、Charもこの頃クラプトンのコピーに青春を捧げていたようだ。東京でも関西でも音楽少年たちがエレキギターに酔っていたのだ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA