技術開発について
一応学校では理系を卒業し技術者枠で採用されたので技術開発について聞かれるが、正直な所技術開発についての明確な認識がない。入社した当時は担当するビジネスの規模は非常に小さかったので、幼稚な設備を少しずつ改良してより大規模生産が可能な設備開発に携わった。成熟した商品ではなかったため、ものづくりについての先人の教科書もなく設備開発も試行錯誤で進めていくしかなかった。そういう試行錯誤の時に唯一参考になるものは他社が出す特許であった。その中には私が思っていた論点とは違うものが紹介されており学ぶべき点が多かった。また設備や材料を調べているうちに、他社が使っているものに出会うこともあった。そしてそれを自社へ導入して我々か他社かどちらが進んでいるのかを比較するのが楽しかった。しかし量産をするようになると実験的なアプローチは少なくなった。問題が起こると現場をよく見て原因について話し合い、やり方を変えてみて良い方向性を判断し、総括をしながら改善・改良を加えるいわゆるPDCAが中心になった。したがって自分自身が新技術を生み出すような技術開発は減り、マネージャーとして優秀なスペシャリストと一緒に問題解決を図ったという思い出の方が強い。実際自分自身もそういうアプローチをするのが自分には合っていると考えていた面がある。年を食ってからこの点を上司から厳しく怒られた。「自分の頭で考えろ」とも言われた。まさにマネージャーとしてチームを指揮するあまり、自分で考えるという技術者としての基本的な習性を知らず知らずのうちになくしていたことをずばり指摘された。
