体を張った時期
私の担当していたビジネスは入社以来大変な苦戦をしたビジネスだった。おそらく今ならとっくに止めようという結論になっていただろうが、中興の祖である会社トップがその将来性を信じて始めた仕事だったので、その後の経営陣も簡単に止めるという結論を出せなかった。結果として事業開始以来約20数年年間赤字は続いた。一方会社全体を見ると、主力となるビジネスは莫大な利益を上げており、主力ビジネスの生み出したお金で私たちのビジネスも何とか継続できていた。口さがない人からは「おまえらは△△ビジネスに食わせてもらっている」とよく言われ大変肩身の狭い思いをしていた。黒字にしたいという思いは皆持っていたが、明確な回答を見つけられないままにダラダラと仕事を続けていた。一方世界のグローバル企業はこのビジネスでしっかりと利益を上げていた。何か根本的なやり方の間違いがあるという認識だけは上層部でもあった。その後トップが代わり黒字化するまでは暗中模索の時代が続いた。特にコストに大きな比率を占める人件費の問題は深刻だった。不況時は全員首にしても儲からないとまで言われた。それでも少しでも費用を下げようと、全体の人数を削って管理職や学卒の者が現場に入るという試みも行われた。ちょうど管理職になるかならないかの3年ほど私は現場の仕事に明け暮れた。おかげで現場の苦労はわかったが、所詮改善する仕事を誰もやっていないので、業績はほとんど変わらなかった。その後明確な方針の下に改善が進められ業績はみるみる良くなっていった。初めて正しい戦略が成功につながることを体で知った。気合だけでがんばっても結果は出ない。
