労務管理の苦労と醍醐味
40才前後で管理職となり部署長を命ぜられた。傍目から見ている部署長のイメージはあまり良いものではなかった。私は製造現場に所属していたが、現場の作業員は200名を越えていた。その200名が交替勤務で仕事をしており24Hrの連続操業が成り立っていた。現場は日々予定外の問題が発生し、その中で働く作業員はいつもプレッシャーと緊張に囲まれていた。そして何か問題が起これば当直班の班長がそれを受けて解決にあたることになっていた。部署長の仕事はそうした班長との面談と指導が中心だった。いわゆる労務管理という言葉を覚えたのもこの時だ。昔の部署長は不満一杯で問題点を挙げる班長たちに対しても臆することなく堂々としているように見えた。現場の班長は私より10才以上上でかつ百戦錬磨の海千山千のメンバーだった。はたして自分に適切な指導をすることができるだろうかと不安になった。つきつけられる問題は、ほとんどが会社のルールに決められていない内容で、部署長が「常識的判断」を持って決めないといけないものだった。当初は色々な問題に悩まされたが、少しずつ自分なりのやり方を作っていった。知らない事は有識者と呼ばれる専門家に相談する、決めないといけない時は腹をくくる、最後は自己責任と考えどんな判断をしても命まで取られないと割り切る、などを心の拠り所とした。プレッシャーを感じる仕事だったが、最後は武器にもなった。労務管理者は部下の人事権を握る。一方部下は上司の評価を大変気にする。核となる人間にいわゆる飴と鞭で叱咤激励することで組織は活性化する。そういう意味で労務管理は有効な手段であることを悟った。
