人事異動を言い渡す

 組織は時々の目的に合わせて変化する。その変化の過程で労務管理は有効なツールとなる。労務管理の中で嬉しくもありつらくもある仕事に人事異動がある。嬉しい人事異動とは、例えば将来を嘱望される部下が期待通りに成果を上げ、一ランク上の立場に就いてくれるような場合だ。同じ職場で苦楽を共にしてきた部下が昇格してくれた場合の喜びは格別のものがある。人前であまり大っぴらに喜ぶことはできないが、心の中で万歳と言いたくなる。また組織に何か変革をさせたいと、他部署でがんばっている人をスカウトしたケースもある。スカウトした場合は、その人の将来に対してスカウトした自分が責任を持つ必要があり、そういう人が期待通りの動きをしてくれた場合もこの上ない喜びがある。一方つらい人事異動は、いわゆる戦力外通告をしないといけないケースだ。このまま自分の部署にいても伸びないなら、環境の違う部署でもう一度チャンスを与えがんばってもらうというものである。また数少ないケースだが、他部署から三顧の礼を持って乞われて、仕方なく送るという場合がある。その人の将来を考えての配慮だが一抹の淋しさも感じる。こうした人事異動は強制ではないものの、組織が決めた以上半ば業務命令に近い。時には頑強に納得しない人もいるが最後はほとんどの人が説得に応じてくれた。一度だけ苦い経験がある。ある時県外への人事異動をお願いしたが、最後まで首をたてに振ってもらえずその人は会社を去った。人は会社のものであり、すべてが個人の希望通りに進むことはない。しかし近年の他社の処遇を見ると、昔の私の対応は果たして正しかったのかと思ってしまう。

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