工場の回りを巡回する癖
ある時期から工場の境界線を巡回する癖がついた。それは当時のトップからの教えが発端になっている。製造業において、望ましい職場の状態を示す言い方に4Sとか5Sというものがある。このSとは整理・整頓・清潔・清掃・しつけのローマ字の頭文字Sを取ったものである。かつて日本の産業が世界のトップだった頃、この4Sや5Sは、KAIZENと同様、欧米でも日本語で紹介された。今もほとんどの日本の会社で管理の基本になっていると思う。そして定期的に管理者が現場を回り、現場が望ましい状態にあるかを確認し、できていなければ指導を行い再確認するというPDCAを回す。そういう事もあり、現場は常に物が整然と置かれ、どこに何があるかわかるようになっており、美しい状態を保っているための努力を怠らない。しかし時として現場にこの整然さを壊すような事態が起こる。例えば生産計画が急に変更になり、大量の使わない部材や梱包材が現場にあふれかえる事がある。その場合、現場の者は緊急避難的に人があまり通らない工場の境界線のような場所に一時的に物を仮置きして現場の整然さを取り繕う。当然正しくは倉庫に不要な材料を返すのが本筋だが、指示が複雑となるのでついこうした仮置き作業で逃げる。管理者たるものが工場巡回をする時は、特に工場の境界線に注意して歩くことで現場の安定度合いを判断できるというのがトップから教えられた事だった。確かに境界線が整然としていない時、現場に不穏な動きがある場合が多かった。また工場の外から工場の境界線がどのように見えるかを確認するのも同様に効果があった。近隣住民のお客様は神様です。
