師匠であった会社を買収、欧州へ
話はマレーシアから欧州へ。2015年10月に社長に呼ばれた。翌年からビジネストップを下りてマレーシアに骨を埋めてほしいと言われた。マレーシアには5年近く住んでおり、定年間近に勤める環境としては良い勤務地だと思って快諾した。その頃会社買収の話が浮かび上がった。かつてBig3と呼ばれた欧米の会社が身売りをしたがっているという話だった。興味深い話だが、ビジネストップを下りたので直接関わることはなかった。次の時代を背負う若い人にがんばってほしいと思っていた。ところが5月連休明けに担当役員がマレーシアを訪れ、欧州地域のトップとして行ってほしい旨が告げられた。マレーシアに骨を埋め、マレーシアのために貢献しようと考えていた矢先の朝令暮改の人事だった。
当時マレーシア工場は皆のがんばりで素晴らしい成果を出していた。一時期会社全体の不調をカバーするほどの好業績も上げていたし、世界のトップレベルの競争力も身につけていた。このままマレーシアにいれば好業績に支えられあまり苦労しなくても定年までいけるとも思った。しかし昔から安定が嫌いで常に変動の場所に身を置きたいという天の邪鬼の虫が動き出した。その買収相手は若い頃目標にしていたライバルであり師匠とも言えるメーカーだった。若い頃憧れた師匠と一緒に仕事をするのも悪くないなと思った。また私の次女がアメリカ人と結婚してアメリカに住んでいた。日本での結婚式の後、先方の皆さんと会えていなかった。悩んだ末に自分が若い頃描いていたグローバルビジネスの総仕上げをするつもりで行きたいと伝えた。併せて可能なら米国も行きたい旨を伝えた。
