ステーキ屋での決起集会

 M&Aにしたがい欧州の会社のトップとして駐在することとなった。これまで私は同じビジネスグループのメンバーと一緒に仕事をしてきたが、今回は勝手が違った。今回海外赴任を命じられたのは、私(現地統括)、技術者2名、経理1名、総務1名といういわゆる買収後に結成された「特別チーム」であった。年齢も30代2名、40代2名そして私ほぼ60という年齢構成で、出身母体ばかりか価値観や労働観などがばらばらなチームであった。ほとんど初めて一緒に仕事をする人もいて、少なくとも現地で日本人同士が揉め事を起こさないようよく話し合える関係を構築しておく必要があると感じた。そこで月並みな手法だったが、私自身が自腹で小決起集会を設けることにした。勿論会社としては、30年ぶりに行う大型の買収案件であり、担当役員がしかるべき激励会を設けてくれていたが、私はマレーシアでの残務があり参加できなかった。私も皆には顔を見て言いたいことがあった。
 場所は京都駅ビルの最上階にあるステーキハウスを選んだ。欧州はうまい食い物は多くあるとは聞いているが、いわゆる和牛のような柔らかくてうまい肉は当面食えないだろうという考えからだった。メンバーは私を除き駐在経験はなく、一様に不安を口にしていた。私自身の経験から言うと、誰でも不安は当たり前だが、結局最後に物を言うのは自分が過去から積み上げてきた人間関係の構築の仕方とか仕事の判断・常識・勘とかいったもので、特別なものは何もない。最後は私とはこういうものだというのを皆にさらけ出して自分の仕事を進めていくだけだと話した。そしてうまく行くことを祈念した。

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