まずは看板の架け替え

 会社の経営権が変わるというのは大変な労力を伴う。松下電器がパナソニックに名前を変えた時、全国のすべての関連会社の名前を変えるために使った費用は膨大なものだったと聞く。我々が欧州の会社を買収した際にも、スタートは会社名の変更からだった。たまたま我々の日本の会社は略称として英語3文字の名前を持っていた。一方買収される側の会社も英語3文字の会社名を持っていたため、看板はその部分を入れ替えるだけで済んだ。とは言うものの、オランダとイギリスの2工場で大きな看板を架け替えするのに数1000万円の費用がかかったとの事だった。また会社は通常会社名に加えて会社のロゴマークを設定しており、会社名の横にこの会社ロゴがつけられた。我々のロゴマークは日本国旗の日の丸に少し似ているが、改めてこのロゴを見ながら一瞬だけ駐在員は日の丸を背負っているのだなあという感慨に耽った。こうした事は一種の新装開店の儀式のようなもので、これ以外にも種々の儀式が行われた。まず会社トップが現地へ赴き、このM&Aの意義と成功への意気込みを語って現地メンバーを鼓舞しないといけない。正直な所、現地メンバーは仕事を続けられるという喜びと同時に、以前勤めていた会社から放り出されたという残念な思いも持っており、彼らをもう一度奮い立たせるようなモチベーションが必要になる。まずDAY1と呼ばれる公式の創業開始日に、日本の本社より社長、担当役員が皆の前で挨拶を行った。私も現地責任者としてこの儀式に加わった。そして会社ロゴのついたTシャツを皆で着て記念撮影も行った。これからの大変さとは裏腹に一瞬ほっとする時間だった。

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