自分のオフィスがある

 オフィスが与えられた。広い机+15m2ぐらいの大きな部屋にテーブルとイスが6脚準備されていた。欧米系会社の管理職は通常自分のオフィスを持つ。事務職クラスでもデスクワークを中心とする人は間仕切り等で隣人と顔を合わせない配慮がされている。一方多くの日本のオフィスは全員が大部屋に同居し、同じチームの人と上司が一ヶ所に机を並べ常にコミュニケーションが図れる配置になっている。いつもお互いの顔を見ながら仕事をしていた私にとって、急にオフィスに一人で業務をこなすというスタイルは多少の抵抗があった。しかしこれも郷に入らば郷に従えで、時間とともに慣れた。この欧米系の個別オフィススタイルは、難しい問題を熟考する人は他人に邪魔されないような環境で仕事をするべきだという考えから来ているようだ。そして工場長や上級管理者のオフィス面積はより広く、種々の面談者が相談できるようなテーブルや椅子が用意されていた。そしてさらに上のクラスになると、隣りのもう一室に秘書がいて、上級管理者のスケジュール管理をしたり資料作成をしたりするのが一般的らしい。上級管理者は純粋に解決すべき重要問題だけに集中することができる環境になっている。その時の私は新会社のトップの立場にいた。隣は工場長の部屋であったが、その部屋は私の部屋より広く、かつ上等のキャビネットや家具が置かれていた。工場長が申し訳なさそうにこの部屋で良いか、あるいは自分の部屋と変わろうかとたずねてきた。私が即座にこの部屋で良いと言うと、工場長はほっとしたようであった。長年ここで苦労してきた人のプライドを守りたかった。

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