かつての師匠へ就任挨拶

 すべてのM&Aの儀式が終わると、いよいよ通常業務の中で欧州人と一緒に仕事をしていく事になった。私は特定の担当業務を持たなかったが、就任あいさつとして彼らに一言だけ話しておきたいことがあった。私が入社した頃、この会社は世界のBig3と認知されていて、アジアの会社のお手本となっていた。特に電子部品に使用されていた材料については、納入先からはこの会社のものが認定品となっていた。当時私の同僚たちがその製品の高い品質特性とその特性を出すためにどのようなものづくりをしているのかを必死で調査していた。その製品を生み出すこの会社の工場名をとってXX製とか△△製と呼ばれていた。(初期のシャープの液晶テレビが亀山製と呼ばれていたのと似ている)また私自身は別の製品の開発を始めていたが、その製法について意見が分かれておりどう進むか喧々諤々の議論があった。1980年代後半にこの会社のトップがやってきて、工場見学をされた後で質問の機会をもらった。私はちょうど悩んでいた自分の担当する製品のものづくりについて質問した。トップの人からいくつかの助言をもらった。私にとっては業界の神様から教えを乞うたような気持ちになった。30年後多くの欧米企業が投資とリターンの観点から仕事の見直しに迫られ、ついにはBig3と呼ばれたこの会社もかつての栄光ある仕事から撤退するという結論を出したのは残念であった。こんな自分の若い頃の思い出を欧州の新しい仲間に話をして、もう一度日系の会社で世界のトップを目指しプライドを取り戻さないかという熱いメッセージを伝えた。下手な英語だったが、少しは通じたのか?

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