バンドは個性の集まり2

 さてやはり3人で演奏するには限界がある。まずボーカル。ボーカルはバンドの色を変える。ここは私がTさんという人を連れてきた。Tさんは天性のユーモアのセンスを持つ。バンドは見た目からという持論がある。見た目がかっこいいとうまく見えるという考えは、往々にして技術至上主義となるミュ-ジシャンには考えつかないものだった。30代前半に彼と会社でバンドを作り、バックバンドの振り付けやMCの大事さを経験した。彼の考えは当時の私にとっては新鮮だった。また彼はUさんと同様、グルメで一家言を持っており、さらに強力に宴会を盛り上げることにもなった。ところでUさんの奥様は昔フュージョン系のキーボドニストで、一緒にダブルキーボ-ドをやった女性を知っているという。その女性がSさん宅へ旦那さんと一緒にやってきた。まず旦那さんの風貌に驚いた。よく言えばこだわりたっぷりの芸術家にも見えるが、そのスキンヘッドからはやはりストリ-ト系の格闘家かその筋の人のような風貌だった。後で聞くと結構若い頃はやんちゃだったようだ。一方奥様Cさんは見た感じはおとなしそうであったが、演奏をすると乗りがすごい。とにかく延々と曲に乗って引き続ける。ジャズのアドリブなどいうものは全く習ったことはないようだが、何かを貪るようにどんどん吸収していく人だった。またその後彼女のボーカルに驚かされる。あるスタジオで練習をしていた時、カラオケがあり、Cさんは急にメリ-ジェ-ンを歌いだした。その訴えかけるシャウトと、なだめるような語り口が交互に続く曲を聴きながら、私はバンドの新たな可能性を見るような気がしていた。

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