日本との確執

 欧州赴任の頃には、私はビジネス全体の部門長を外れ、欧州のみを管轄する立場となっていた。したがってビジネス全体の中で、欧州事業をどのように活用していくかなどの情報は日本の本部で議論されており、正直な所会社トップが欧州ビジネスをどのように考えているかは現地には見えない状況にあった。ただ欧州の役員会に本社の担当役員が毎回フェースツーフェースで出席してもらっていたので概要だけは理解できた。これまでの海外子会社は基本的に一から工場を建設して、従業員は会社の考え方を完全に理解しているので、多少意見の違いがあってもそれを修正するのは比較的容易だった。しかし欧州の会社は元々米国資本の会社に買収された会社であり、30年近く米国の会社のマネージメントにより管理されてきた。したがって従業員の中にはそれまで培ってきた企業文化から日本流の文化に変わることに対して大変抵抗があったものと思う。日本からは日本でやっている通りのマネージメントを要求してくる。例えば日本で当たり前に使っているKPI(キー・プロセス・インディケーター、マネージメントの指標となる数字)を作成して、マレーシアを含めた万国共通の指標としようとする。しかし欧州の会社はそんな特殊なスペックの数値など使ったこともなく、毎回毎回そうした依頼が出されるたびに「何故その数字を出さないといけないのか?」を懇切丁寧に説明してお願いしないといけなかった。彼らから言わせれば、今までのやり方でちゃんとやれていたのに、何故改めてそんな数値作成のために膨大な労力をかけなければならないのか?という疑問が出てくる。私のいた1年間はほぼこうした日本の要求とその理由を説明することに追われることになった。

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