若い駐在員ともめる
欧州ビジネスは会社を挙げての大型プロジェクトとなった。そして駐在員として現地に行くメンバーも年齢的には30代前半から50代後半(私)まで幅広く、かつ出身部門も私の出身の工場の製造部門ばかりでなく、いわゆる管理部門として本社からも選抜されていた。赴任中に本社から来た若い人とよく「仕事と処遇」について喧々諤々の議論をした。彼はこの会社に途中入社で入ったが、種々の処遇で満足していなかった。彼の言い分からすれば、「私は〇〇の資格やXXの資格を持っているので、この程度の立場の給与は与えられるべきだ」という論法を展開させた。さらに家族を欧州に呼び寄せたり自分が日本へ帰るのに十分な会社補助がないなど、駐在員の処遇に関する色々の問題点を本社にも訴えていた。この種の「資格と給与/処遇」の話はマレーシアでも聞いたことがあり、彼らの言い分を全く否定するわけでもなかったが、古いタイプの私はどうしても納得できない部分がありことあるごとに夕食を食いながら議論した。私の説明は、「あなたが現在の仕事を行いそれを完遂するのに潜在的な能力を持っているのは疑いない。しかし大事なことは潜在能力を持っていることではなく、実際にその能力を使って現地の問題を一つでも多く解決して見せることだ。結果として誰もがあなたの能力と実績を見て高い処遇にふさわしいと思った時に初めて上位の処遇を受け取るべきではないのか?現在のあなたは正直な所何も達成していないではないか?」というものだった。彼はこの議論を時代の差だと受け入れないままに欧州ビジネスが開始されたわずか数か月後に会社を去っていった。
