不安の取り除き方
ビジネスの部門長になってからは毎日が不安の連続だった。このビジネスがもしも無くなったら、もしも中国勢にこの仕事を取られたら、マレーシアに経営資源を集中しているが大きな災害が発生したら、心配の種は尽きることなくあふれ出て頭の中を一杯にした。これに輪をかけて会社トップからは次から次へと要望~指示~命令が送られてくるし、足元では生産不調や労務トラブルなど足を引っ張る問題がただでさえ忙しい中で私の心を苦しめた。そんな時に何とか心の安らぎを得る方法を求めて世の中のハウツー本を読み漁った。しかしハウツー本に書かれている内容の99%は私に当てはまるものではなく、それでも何とかしたいという思いから本を読み続けた。そうした中で私が唯一納得できる内容を見つけた。それは「不安は将来の事を考えるから起こる」という一文だった。考えてみれば自分に起こることを悩むのは、将来どうなるかわからないから心配するのが理由であって、目の前に起こっていることで悩んでいるわけではないことに気がついた。それからは将来の問題に悩んで心が折れそうになる時は、ともかく目の前のことだけを考えて、それを黙々とこなそうと考えた。そうすると忙しさや違う問題で頭が一杯になり、気がつくと将来の悩みはどこかに遠ざかってしまっていた。こういう話をすると、いやそれはその場しのぎだけで将来の重要問題から目を背けているだけではないのか?という意見が出てきそうである。ところが人間とは面白いもので、別のことを考えているうちに新たなアイデアが出てきて、難しい問題にチャレンジしようというファイトが湧いてくるから不思議だ。
