オーディオマニアでない私
バンドを始めた人の多くはレコードから流れる音楽家の素晴らしい演奏を聴いて自分も同じような演奏をしたいと思ったのではないか?例えばギターの音色一つをとっても、ギタリスト毎に色々な音色を持っている。そしてその音色で演奏してこそ、あのギタリストの演奏だと思うわけである。またライブ録音では、その場に自分が居合わせたかのような気持ちになるためにも、可能な限り実際の演奏に近い録音を再現したいと思うものだ。こうしたことから私の学生時代はオーディオ機器に凝る人が多かった。特にアンプやスピーカーは〇〇製でないとダメとか言って喧々諤々の議論をしていた。こうしたアンプやスピーカーを一式揃えると、総額で数百万円ぐらいかかりとても一般人でそろえるのは難しいような状況だった。それでもこうしたオーディオマニアは少しずつお金を貯めては良い物に買い替えて、気がついたら貴重なセットを完成させていたりする。こうした人がバンドをやると、まず楽器に金をかけ、出力するアンプやスピーカーに凝り出し、最後はPAに凝るようになる。こういう風潮が一般的であった私の学生時代に私はというと全く音響システムには無頓着であった。その理由はそんな高価なものを買うのは無理だというあきらめがまずあった。またコスパの点で、その価格と自分が満足するレベルの音を考えた場合、少々安いシステムで聴いた音でも十分だと考えたからである。会社を退職後、町内会で一緒にバンドをやっていたメンバーの家へ行った。彼は相変わらず素晴らしいシステムで聴いていた。彼の蘊蓄を聴きながら、ブルートゥ―スの数千円のスピーカーで満足する私がいた。
