陣取り合戦、日欧営業メンバー

 M&Aを行って買収した会社は欧州のライバル関係の会社だった。それまではお互い競合していた会社を買収したことになる。私は製造部門として現地で駐在し、ものづくりのやり方のすり合わせを行っていた。多少のものづくりのやり方は違えど、最終製品は同じものを作るので、お互いに切磋琢磨して良い部分を取り入れていこうという前向きな雰囲気が出来上がりつつあった。しかし販売面では現地の商売をどのように扱うかで深刻な問題があった。これまでは日本から欧州に輸出した製品を日本の出先機関である現地販売会社を通じて販売していた。しかし今回欧州の会社を買収したことにより、これまで使っていた現地の販売組織が必要なのかどうかなど色々な問題が出てきた。また同じ客先に対しても日本から営業マンが訪問し、一方欧州では買収した会社から営業マンが訪問するという2重外交のような形が出来上がってしまった。結果として誰がイニシャチブを取って販売活動を行うのかという点でも難しい状況が生まれるようになった。しかしこの悩みはM&Aを行えば必ずと言ってよいほど発生する問題だった。要はこれを問題と考えずむしろ前向きに相乗効果ととらえるべきだと考えた。本来遠い日本から欧州へ人を送って物を売るよりも、現地に現地語でしゃべる営業マンがいるのだから、そういう人間を活用しない手はないという考えが自然と出るようになった。したがって私を含めた駐在員側は日本のトップマネージメントに対して、「現地のことは現地でやるべき」という基本的な考え方を元に、販売組織の現地化をより推進するべきだという意見を送ることにした。

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