突如「アメリカへ行け!」

 欧州の生活も慣れてきたので、家族を呼んで一度旅行でも行こうと計画を企てた。行先はオランダを中心にベルギーやドイツの周辺国を車で回るツアーを考えた。そして飛行機の予約ができたところで日本の上司に電話した。「今度の盆あたりで家族旅行をしたいので、10日程度の休みを取らせて下さい」ところが返答は予期せぬものだった。「それはちょっと止めてもらった方がええな」思わず「何でですか?娘は盆の時しか休みが取れません」と言った。上司が言うには「実はな、アメリカの買収がうまく行きそうや。ついてはあなたにアメリカへ行ってほしいのや。これは社長も了解している」という返事だった。会社は前年に米国ベースの会社からその欧州工場のみを買収していたが、その後米国工場の買収についても検討が進められているのは知っていた。しかし私には何の情報も知らされずにいたので誰かが米国の仕事に就くのだろうと思っていた。この話については少し上司に文句を言った。マレーシアから欧州に行く際には、前年度に「マレーシアに骨を埋めて欲しい」と言われていたのに朝令暮改の人事だったし、米国の話も何も聞かされていない中での急な米国人事だった。さすがに情報を共有してもらえないことに対して一言二言文句を言ったが、そこはサラリーマンでかつ管理職である以上会社命令には従わざるを得ないと自分を納得させた。それともう一つアメリカに対しての期待もあった。それは2年前に米国人と結婚した次女と長らく会っておらず、一度先方の家族も含めて会いたかったということだ。以上より私の欧州旅行は没となり、あわただしく米国への準備を始めた。

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