ストレスは現場で起こった

 子会社の方針についてとやかく親会社が干渉したり介入することは少なく、そういうマネージメント面でストレスを感じることは少なかったが、実際に実務をしている各工場では随分違う意味でのストレスを聞いた。私たちの主要業務である「障害者雇用」は親会社にとっても会社のステータスを上げる意味である価値を持っていた。したがって親会社の本社部門はあまり私たちの活動に口を挟まず自由にやらせてくれていたと思う。しかしこれが工場部門になると勝手は違った。工場部門は実際に売り上げと利益を稼ぐ部門なので、日夜売上の向上と費用削減による利益創出に命がけで取り組んでいる。そしてそれがわずかの費用しか発生しない私たちの子会社であっても考え方は同じで、少しでも費用を下げるための努力を要求されることになった。本体の親会社で「どんどん障害者雇用を前向きに進めなさい」という掛け声が、工場部門に行くと「本社はそう言っているが、一方では費用を下げてもっと利益を出すようにも言われているしなあ」というようにトーンダウンして伝わってくる。いわゆる総論賛成、各論反対という状況になってしまっていた。私自身はビジネス部門で長く工場におり、厳しいコスト削減を何十年も経験してきたので、工場でのこの姿を容易に理解できた。一方新たに会社に社会的価値を与える仕事である「障害者雇用」という仕事は、工場の利益創出活動とは別に考えないと取り組めないものであることも理解して欲しいと思い、この狭間で思い悩むこともあった。工場からの圧力が非常に厳しい場合は不本意ではあったが、会社として抵抗せざるを得ないこともあった。

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