数合わせの目標、本物の目標
会社の使命は「一人でも多くの障害者に働いてもらうようがんばる」と心得てこれまでの状況を見直してみた。過去から会社関係者がこの使命に向かって努力された跡が随所に見られた。特にこの取り組みを重要視した親会社トップから目標値の底上げを求められた時期が10年ぐらい前にあったが、この時は実に1年間で一気に10~20名の障害者の採用を進める活動が行われた。そしてちょうど会社創立30周年にあたる年にその目標値を達成することに成功していた。しかしどんな仕事でもそうだが、しっかりした仕組みや仕掛けを施して行わないような強引な底上げというのはどうしても無理がかかる。その後10年間は数値を上げることができずに会社は目標そのものを見失っているかのように私には見えた。障害者の人の採用はしっかりした準備がないと難しかった。まず自分たちの実力がどのレベルにあるのかを把握した上で、採用する障害者を選択しないといけない。勿論願わくば仕事を求める障害者全員を採用できれば良いが、現実には職場内でうまく定着させることができなかったり、他の障害者の人とうまくやっていけなかったりと職場は混乱を極めた。しかし幸いだったのは、そうした反省に立って数年前から採用や職場定着や新たな仕事の創出といったノウハウの構築が進んでいた。そしてすでにその血のにじむような努力の結果が見え始めていた。ただ幹部メンバーはキーになるノウハウを自分たちがつくり上げ、それを使って目標を立てて次へ進んでいくことができることを自覚していなかった。そこで私は彼らの背中を押すつもりで10年越しの目標値と使命の設定をした。
