致命的な事件が起こらないことを祈っていた

 障害者を扱う会社に入って一つ大変心配していたことがあった。それは心の病で自分の命を絶ってしまう人がいないだろうかということだった。現在は本当にストレスが多い時代である。ストレスは個々人の心を蝕み、場合によっては個々人の生きる気力さえも奪うことがある。事実障害者でなくとも、毎日のように生きがいを失った人がJRやその他の駅で走行する列車に身を投げることでもいかに心の病が危険なものかがわかる。健常者の人でもこうした事があるのに、ましてや精神的に不安定さを持つ障害者がどんなにストレスを溜めているかは容易に想像ができる。幸いに私は仕事で追い込まれて命を絶った人を自分の職場では知らないが、他の職場でそうした不幸な事件があった事を多々聞いていた。ほとんどの事故は会社外で起こっていた。寮の一室で亡くなった人、海外赴任中にホテルで亡くなった人など、一人になった時に突発的に死にたくなることがあるのだろうと思った。この問題に対して私は会社幹部と真面目に議論したが、幹部の意見は「こうした事故は会社内の問題ばかりで起こるのではなく、個々人の置かれた環境により起こる可能性が高い、したがって会社として深く関わることは難しい」というのが結論だった。しかし本気で取り組むなら社員に専門の資格、例えば精神療養士のような資格を持った人を整備してはという意見なども出た。結局私の在任中は職場の雰囲気を少しでも明るく、お互いを非難し合わないような職場づくりから始めようという玉虫色の提案で終わった。こうしたことに入り込んで最適な回答を出してくれる人が出現するのを祈るばかりだ。

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