「禁じられた遊び」が弾けたら名手

 私がギターを始めた中学生の頃まだ「うまいギター」というもののイメージが私にはあまりなかったが、唯一あったとすればある映画の主題歌でギターをフューチャーした曲だった。この映画は「禁じられた遊び」というフランス映画で、戦争で両親を失った少女がある少年と出会い、彼に死んだ子犬の墓の作り方を見せてもらい、死者の葬り方を教わる。そして2人は次々とお墓作りという「禁じられた遊び」に夢中になっていくという内容である。この映画のあらゆる場面で、ナルシソ・イエペスというクラシックギターの名手が主題歌の演奏を行っている。私がギターを始めた頃、多くのギタリストはこの曲のコピーをしようとした。この曲が異様にかっこいいのは、右手の3本の指で同じ1弦の音を弾くトレモロ奏法という手法で均一に同じ音を美しく弾けるようになるのに相当な練習が必要になった。またさらにこの曲は前半は短調の曲になっているが、途中から長調に転調したところから指使いが異常に難しくなったため、ほとんどの人がこの部分で挫折してしまうという曲だった。したがってこの曲を最後まで弾き終えることは一種の修行の完成のようなところがあって、皆の前で演奏して誇れるような気分を感じたものだった。そしてさらに言うと、この曲ができたら、次は「アルハンブラの宮殿にて」という、やはりトレモロ奏法を駆使して演奏する曲があり、これもやれるようになった人は私のまわりにはほとんどおらず、途中であきらめてフォークソングのコードをジャランと鳴らしてお茶を濁すことになってしまう人がほとんどだった。

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