G楽器がなくなっていた

 海外での赴任から帰ってきて、京都の西大路通りを歩いていたら随分景色が変わっていた。勿論京都を離れて40年弱になるので景色が変わっていくのは当然と思うが、そこにあってしかるべき景色が無くなっているのは少しショックなことだった。それはG楽器店が無くなっていたことだった。G楽器は私が学生の頃にアルバイトをした店で、この店を通じて社会人バンドの人と出会うことになり、その後私が長く音楽に関わることになる起点とも言える場所だった。店はかつての建物はそのままに歯科に変わっていた。そういえば、G楽器で知り合ったW兄弟のお兄さんのお葬式の際にかつて一緒に演奏したIさんからG楽器の店主が何か宗教にはまって店をやめてしまったような話を聞いたのを思い出した。ただG楽器は京都に2軒あり、1軒は私がバイトをしていたG楽器で、もう1軒は洛北の方でクラシックギターを中心に販売していて、そちらはいまだに健在であることを確認した。私自身は家庭教師というアルバイトはしていたが、ここで初めて本当に社会で他人からお金をもらって好きな事をする経験をした。そういう意味で自分の青春の一部が消え去ってしまったようで少し淋しかった。思えば買ってくれたお客さんに「おおきに!」という京都弁で感謝するのを覚えたのもここだったし、女の子と一晩を明かしてそのままG楽器へ行ってほとんど店で寝ていて怒られたのもここだった。また一度だけ店主に木屋町に誘われてへべれけになって飲んで、帰りは同じバイトの子に肩を借りて帰ったこともあった。青春のひと時だった。

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