帰任の連絡
マレーシアに50代半ばで遅い海外デビューを果たしてから、すでに7年半が経過していた。その年の10月に社長より一旦帰国をして会いに来るよう通達があった。すでに私の年齢から見て帰任の説明だろうと思っていたが、案の定社長から来年より日本に戻るよう話があった。また併せてこれまで担当していたビジネスから離れて異なるビジネスに就くよう命を受けた。自分ではあまり年齢のことは感じていなかったが、そう言えば夜中によく目が覚めたり、足が急につったり、疲れやすくなっているのを何となく感じていた。それでも海外にいる間は、何となく「日の丸を背負っている」という自負心で疲れや弱気になる心を振り飛ばして闘ってきたが、正直少し海外で闘うのはきついかなと思っていた矢先だった。もう闘わなくても良いと悟り少し気持ちが楽になった。11月初めの現地法人の役員会で正式に私の人事異動の説明がなされた。現地のメンバーは少し驚いた顔をしていたが、私の年齢は皆知っていたし、いずれはと思っていたと思う。その後は欧米人のドライさを感じることになった。今後会社の中核を担うメンバー達は徐々に私の方を見るのではなく、次のリーダーの方を見るようになった。当然のことだが、その変わり身の早さに思わず苦笑してしまいそうになったのを覚えている。ただ一方で買収した現地法人の中にも私と同年代のシニアメンバーが多く勤務していた。彼らからは随分ねぎらいの言葉をかけてもらったし、お互いに退職後の人生について話し合う時間もあり勇気づけられたような気もした。
