FGの死

 同様に買収した会社のある人物の死亡について。米国で働き始めた頃、フランク・グリーン(以後FGと略す)の死が現地社長を通じて報告された。FGは買収先の会社の30年ぐらい前の経営トップで、実は私自身は入社2年目の若い頃に日本でお会いしている。ちょうど彼が勤める米国の会社が日本の同業の提携先を探しに日本にやってきた際、私の勤めていた会社にも表敬訪問に訪れた。たまたま私も打ち合わせに参加する機会を与えられた。当時私はある製品のものづくりの生産方式について二者択一でどちらを選ぶか悩んでいたが、FGに質問するとこちらで行くべきではないかという答えをもらった。皮肉な話だが、後日我々はそれとは違う方式を採用することになった。さらにはFGが経営をしていたオランダ工場でも同様に彼の判断とは違う方式を採用していたのには驚いた。弘法も筆の誤りなのかそれとも時代の流れだったのか。しかしその後40年近く経って我々はかつてBig3と呼ばれた米国の会社の一つを買収することになり、あらためてFGのことを思い出すことになった。このFGとの出会いの話はその後欧州でも米国でも皆に話をしたが、大変興味を持って聞いてくれたし、私自身が新しい買収先の会社に対して尊敬と好意を持って接しようとしている事を理解してもらえたのではないかと思う。実際にFGの顔は私の頭の中には残っていなかったが、米国で何かのセレモニーでしゃべっているFGの写真を見ることができた。少し強情そうな感じで、ハードネゴシエーターという感じだったが、こういう人と話ができたことを何となく感慨深く思った次第である。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA