標準化できない日本人
結果的にわずか8年ではあったが、世界を回って日本へ帰ってきた。それぞれの国に一定期間住むとその国が好きになる。住めば都ということだろう。そしてそういう感情になる頃には、日本のやり方に疑問を持つようになった。特にマレーシアには比較的長く滞在したが、必ずしも日本で良しとしてきたやり方がマレーシアに合うとは思えなくなる時があった。日本人は真面目で決めた事は徹底する人種に見えるが、実際の所「徹底させる」ことだけをとらえれば、マレーシア人の方がうまいと感じる。日本人は何かを決めて始めるが、そのうちに自分なりにどんどん改良を加えるようになる。そして気がつけばやり方が個人により全く異なってしまうようなケースが多く見られた。つまり「〇〇さん流」のやり方や流儀ができてしまう。そして日本人の中でも〇〇さんとXXさんではやり方が異なるということが平気でまかり通る。このためマレーシアの現地メンバーに新しい技術を指導に来た日本人メンバーが個々に指導方法や指導内容が異なり、現地の人を混乱させることがよく起こった。これを防ぐ方法として作業手順書を更新するという手法があるが、事務作業を面倒と感じる職人気質のメンバーが「俺の言う通りやれ」と手順なしに指導をするので余計に混乱を助長することになった。しかし有難いことに日本人を尊敬してくれるマレーシア人は、そんなバラバラの日本人の考えの「最大公約数的な」エッセンスを取り入れて手順を作り部下に指導を徹底していく。結果最も標準的なものづくりの考え方はマレーシア人が伝承してくれることになった。
