安全第一の社風
安全第一とはほとんどの日本の企業のスローガンとなっているが、実態として安全が第一として扱われていないように感じる会社もある。私が以前勤めていた会社は旧態依然の製造会社で、昔からの悪い伝統を色濃く引き継いでいた。安全第一については、確かにスローガンはあった。しかし一方で効率優先という言葉も同じぐらい重要視されていた。例えば何かの工程トラブルでラインを停止しないといけないようなケースでも、古い体質の会社は何とか機械を止めずにトラブルを直そうとする傾向が見られる。しかしおうおうにして事故はそういう非定常な状況で発生しやすい。そしてそういう事故が起こるたびに、「トラブル時はマシンを止めて処理をしよう」と改めて皆で誓うが、結局同じ事故を繰り返してきたというのが実態である。ところが今回入社した消費者に近い製造販売会社では、この安全第一が徹底されていると感じた。例えば売り場には何段もの棚に商品が置かれているが、万一地震等が起こった場合、商品や在庫が棚から落下してお客様に当たらないよう、特に大型で重量のある商品には落下防止を付け、お客様側へ倒れて来ないよう管理をしていた。これを店では「コンプライアンス」と呼んで、周知徹底すべき項目に指定されていた。また私は荷受けや品出しの仕事も行っているが、時として積んでいる荷物が倒れてあやうく怪我をしそうになった時もあった。この際に同僚の人から言われたのは、「大丈夫か?荷物など壊れても良いが、怪我だけはしないようにしてくれ」という言葉だった。「売れる品物よりも安全が大事」という姿勢は当たり前かもしれないが、目を開かれる気がした。
