ホーボー、流れ者
日本で流れ者というと何かやくざ者が世間に背を向けて生きているというイメージが強いが、そういう意味ではアメリカの流れ者はかなり違うイメージだ。ジャニスジョップリンという女性ロックシンガーの曲に「Me and Bobby Mcggy」という曲がある。その中の歌詞に「自由っていうのは失うものがないことなんだ」というのが出てくるが、何も失うものがなくその日その日を自分の思うまま自由に生き続けることが自分らしさを持ち続けることだという考えは1950年代~70年代の自由の国アメリカの多くの若者に支持された考えだった。私が中学生の頃ヒッピーという自由を謳歌する若者の生き方が紹介された。ヒッピーは世の中のルールや規則に反対して自由に生きることを主張し、体制と戦い続けた。ただ麻薬を吸ってハイな気分になって暴れたり、フリーセックスを謳歌するような悪い面ばかりがメディアで取り上げられたが、彼らの心の底にある部分はこうした「自由への憧れ」だったのだと思う。アメリカの映画や音楽の歌詞にはホーボーを題材にした作品が本当に多い。私が中学生の頃に見た「Easy Rider」もベトナム戦争に反対するヒッピーの主人公が自由気ままに放浪しながら生きていく姿を映していた。それをかっこいいとは思わなかったが、しかしすごくアメリカらしいと思い、その心情を理解したいと思った。ウッディー・ガスリーの名曲「Hobo’s lullaby」は放浪する流れ者のさびしさや優しさを歌詞にして、流れ者にのエールを送っていた。2020年代の世界を見るとまるでちゃらんぽらんな生き方の流れ者だが、ある時代のヒーローであったのは間違いない。
