M&Aは皆が勉強になった
こうしてまず相手の会社の品定めを行うデューデリジェンスを行った後、数社の買収を希望する候補の中から我々が選出された。買収する会社の事業範囲や買収額などを提示し買収先の反応を待つことになった。私は事前デューデリジェンスを通じて、どの点は価値がある、どの点は評価が低いなどを明確に感じ取れたのでそれをトップに対して具申した。それにしても会社の評価というのは難しい。当然売られる会社は何重にもお化粧をして自分を美しく見せ、少しでも高額で買ってもらうよう仕掛けをしてくる。一方買う側は化けの皮を一つでも二つでもはがして真の実力を明らかにする事により、会社の価値を是々非々で評価できるようにする努力を行う。またさらに会社の大まかな価値と評価額を決めると、次は大きな落とし穴がないかを何回かの工場見学を通じて確認する作業が入ってくる。残念ながらこの段階で私はトップから買収業務から離れて、マレーシア工場の経営に専念するよう言われており、そうした作業は蚊帳の外で噂を聞くのみとなった。しかし同じような仕事を行う会社なので、見るポイントは良くわかっている。それぞれの部署で問題点を明確にして自分たちより進んでいるのか劣っているのかを評価する作業が進んでいった。こうした作業はこれまで会社全体としてほとんど経験のないものであった。しかし会社がより大きくなるためにM&Aという手法を使うことは至極自然なことであった。おそらくこのM&Aは金額もさることながら、井の中の蛙であった我々にとって一歩グローバルな会社になるための勉強になったものと思う。
