バラード演奏の思い出2
ドラムス以外にもベース奏者もバラードにはお決まりの奏法を持っている。それは弓を使って弦を弾く奏法だ。クラシックでは弓を使って演奏するのは標準的だが、ジャズではめったに使われず、通常は指で弦をはじくのが一般的だ。しかし例えばエンディングのここぞという場面で弓で弦を弾くと何とも言えない感動的なエンディングを生み出すことができる。またバラードによく使われる曲の変化として「バイテン」というやつがある。「バイテン」とは正確には倍テンポのことで2倍のスピードに上げて演奏するすることを意味する。バイテンは突如として誰かが仕掛ける。そして一旦テンポが倍になったら、全員がそれに合わせる。通常バラード曲は大変遅いテンポなので、倍にしてもそれほど速くならないが、曲調は変わるので違う曲を演奏するように気持ち良い。そしてそこそこ倍テンポが続いた後、テンポが元の半分に戻り曲が終わるというのが普通である。しかしテンポを変化させるのはある意味演奏者泣かせになる場合もある。我々素人が演奏すると、始めと終わりで曲の速度は似ても似つかないようなものになってしまう場合が多い。そのぐらいバイテンはリスキーな演奏である。ある時プロの演奏家が倍の倍(4倍)で演奏するのを見た。最初は眠くなるような超スローな曲が、ノリの良い感じになり、さらに超アップテンポに変わっていく様はすごかった。ところが、その後半分さらに半分とテンポを落としていくうちに、元に戻った時には超スローとは言えない「少し遅い曲」になってしまっていた。さすがにプロのメンバーも苦笑いをしながら曲を終えたが、プロでもリスキーなバイテンだと思った。
