世界一になると人が寄ってくる1
私の関係していた重厚長大の素材産業においては数量的に世界一でないとビジネスの主導権を取ることができない。トップより何度も「世界一になるんや」という言葉を聞かされ続けてきた。しかしすべてにトップになるのは難しいので、ある商品に的を絞ってトップを目指してきた結果、世界一と言われる分野を確立することができるようになった。その頃に会社トップから「世界一の企業の矜持」というべきものを色々教わった。この方は家庭用電子機器に使われる重要素材で世界一を取った実績を持っておられ有益な話が多かった。中でも心に残った話は「トップになると人が向こうから寄ってくる」という話だった。世界一でない頃は、ユーザーへ行ってもなかなか相手にされずそれなりの対応しかしてもらえなかった。しかしトップになると今後の資材納入計画を示され、それに対してちゃんとした答えを要求されることになった。また生産に必要な部材の納入業者からはひっきりなしに会って話を聞いて欲しいという依頼が来るようになった。さらに驚いたのは、業界での定期会合以外では会うことはなにだろうと思っていたトップの競合他社より何度も会いたいとの話が来るようになった。勿論この手の話はいわゆる独禁法に触れるような内容もあるので公式には双方の弁護士を同席させて話を行うということだった。さすがに独禁法で相手を苦しめてきたメーカーは違うと思った。ある時は一緒に製造場所を共有して共通ブランドで製品の販売をしようとか、ある時は製造に使用する装置を安く貸すので一緒にやらないか等々だった。しかし最後まで深謀遠慮の欧米人になびくことはなかった。
