月光仮面という曲
月光仮面というと私が幼稚園か小学校に入る頃の正義の味方でありヒーローだった。よく近所の友達と風呂敷を背中につけては「月光仮面ごっこ」をやったものだった。この正義の味方の主題歌があった。「どこの誰かは知らないけれど誰もが皆知っている。月光仮面のおじさんは正義の味方だ良い人だ。疾風のように現れて、疾風のように去っていく。月光仮面は誰でしょう?」という何とも意味不明というか安直に書かれた歌詞だったが、我々少年はこの歌を歌いながら「月光仮面ごっこ」をしたものだった。ところが私が大学生になった頃にモップスというバンドがこの曲を大きくアレンジして歌っていた。大きくアレンジしたというのは、簡単に言えばブルースコードを使ってブルースの曲のように歌っていたということだ。これを聞いて何でもブルースにしたらええっちゅうもんやないやろうとも思ったが、逆にブルースというジャンルの音楽は何でもありで、まあこれはこれで良いかという気にもなった。ブルースはそういう意味で替え歌にするのに最適な曲調の音楽とも言えた。これを歌っていたモップスは、その後芸能人になった鈴木ひろみつを歌手とするバンドで日本のロックの草分けのバンドの一つだった。ともかくイギリスもアメリカも日本もまずロックバンドが現れると3コードのブルースやロックンロールから始まり、徐々に個性的な曲を生むようになる。ほとんどの人が聴いてすぐに忘れてしまう曲だったと思うが、私の中ではすべての国の若者文化が必ず通る音楽形態の一つとして日本でもこんなつまらん曲がレコードになっていた事を知る記録のような気がした。

初期の和製ロックバンドモップスのアルバム「月光仮面」