計算による設計
私は理科系学科を卒業し製造会社に入社したが、どうも教科書に書いてあることをまともに信じることができないタイプの人間だった。その理由は、「教科書に書いてあることは元々正しいのだが、世の中はその通りにならないものが多く役に立たない場合が多い」という認識をしていたからだ。ところがまっとうな人間は理論や数式のようなものを心の拠り所として予測をしたり設計することを目の当たりにした。入社して機械設計をするKさんという人に色々教えてもらうようになった。Kさんはこの会社が2回目で、以前はベンチャー企業に勤めておられた。そのベンチャー企業では機械設計について大きな責任を任され、種々の設計を手掛けた百戦錬磨だった。彼の話を聞くと、「この動きは〇〇の法則に従うので、△△数式で計算すると・・」といった説明がどんどん出てくる。ところが私の方は前述の通りあまり教科書を信じておらず、ほんまかいな?と彼の説明に対して半分疑いを持って見ていた。ところが後年私が経営の立場を担うようになった時に、彼のその時の思いに大きく賛同するようになった。彼の場合は機械設計の担当だったが、機械にとって目的を満たす性能を達成するかしないかはちゃんとした理論で決まっていた。彼はその当たり前に沿って設計をしているだけだった。それ以外にどうやって自信を持って正しい設計を行うことができるのか?ということだろう。同様私も後年になり多くの判断をしないといけない場面に遭遇したが、その度に「心の拠り所」となるものを決めて、それに基づいて判断するようになった。勘で決めた事は人に説得もできないし、根拠もなかった。

勘でなく理論に基づく設計というものを学んだ