他社情報を探し回った頃
前の会社に入社してすぐに他社情報を探ることに夢中になった。これにはある一つのきっかけがあった。ある得意先で品質問題に困っていた。それもレベルの高い品質問題ではなく、異物混入であるとか検査ミスによる不良の混入であるとかいったいわゆるヒューマンエラーに関わる問題であった。初めてその大手企業に大量に製品を納入するようになってから、それまでの少量生産では気がつかなかった管理上の不備が見えてくるようになった。そうしたつまらない問題が発生するたびに、その大手企業から呼び出され大目玉を食らうことになった。しかしその担当の係長さんとは腐れ縁というのか、それだけクレームを出しているにも関わらず、何故か「愛のある」厳しい指導をしてくれた。言葉はきつかったが、決してだから納入停止ということはせず、次回の改善を見守ってくれていた。私の運が良かったと思うが、その人は「鬼の係長」でその会社では有名な人だったが、結果として私はその人の懐に入り込むことができた。しかしその後もクレームが続き、遂に意を決した私はその人に「〇〇工業ではどんなやり方をしているのか教えてもらえませんか?」と電話をかけた。いわゆるスパイ行為であった。一瞬間をおいてその人は「明日は土曜日だな。ネクタイを外して俺の所まで来い」と答えてくれた。そしてそれがきっかけで私は種々の他社情報を得ることができ、自社の技術を格段に上げることができた。思えば入社時の上司から「自分の頭でわからんかったら、聞いてこい」の一言から始まったことだった。その後他社情報を得る機会というのは私の中で超重要な面談の一つとなった。

あらゆる方法で調べた他社情報