M&Aを考えた地域1:他社は?
私の担当していた工業製品はいわゆる「産業の基幹素材」で、鉄・アルミ・プラスチックと同様種々の工業に使われる素材であった。2000年ぐらいからのBRICSの工業化にとって、基幹素材の需要はどんどん旺盛になっていった。そうした背景から、2006年頃から戦略生産基地であったマレーシアでの生産規模拡大を押し進めていった。しかし旺盛な需要はマレーシアの広大な敷地をすべて使ってもまだ不足していた。そのため2020年代に入り次の生産拠点を考える必要がでてきた。その参考になるのはずばり他社のM&A戦略だった。世界No.1だった米国メーカーはNo.2の欧州メーカーを買収して何とかNo.1の座を保っていた。しかしM&Aによる統廃合の苦しみの中で、この会社は約10拠点を最終的に手放すことになった。ある中国メーカーがその1拠点を買収していった。ある米国ベースの会社は東ヨーロッパのスロバキアに新拠点を求めた。ここの優位性は安い人件費と、欧州市場への近さだった。かれらは冷戦時代からすでに存在していたローカル企業を買収して、その工場に最新の技術を導入して生産を開始した。また中近東に拠点を求めた中国メーカーが現れた。彼らは中近東の安い人件費と猛烈に安い燃料費に魅せられて工場を建設した。また主原料はインドとパキスタンの国境あたりから供給されていたが、意外とこの地域と中近東は近いことがわかった。ある米国の会社は中国と合弁会社を組み、電子部品向け素材を生産する選択を行った。また本場米国に殴り込みをかける中国No.1の会社も出てきた。世界中で様々なM&Aが行われる中、私の会社も選択を迫られるようになった。

何もかも良い条件の国はないなあ・・・