M&Aを考えた地域3:スロバキア
我々にとってM&Aにより得られる果実は欧米市場へのより安定した供給だった。当時我々はアジアの日本とマレーシアから欧米にたいして輸出を行っていた。しかし客先からすればやはり自分たちの工場に近い所にベンダーの供給基地があるのが望ましいと思っても仕方ないことだろう。いわゆる「地産地消」であるに越したことはないという訳だ。そんなことからできればM&Aを行う場所は欧米に近い場所が良いと考えていた。そんな中米国ベースで世界No.5ぐらいの会社から一緒にやらないかという提案を受けた。彼らの言い分は、お互いに所有している工場の一部に相手の製品を生産することで販売の需給に合わせて生産調整ができるようにするというもので、これまでの買収や合弁会社のような考えとは少し違った提案だった。それまでのこのメーカーも既述のトルコのメーカーと同様、かつて我々の会社とは技術援助契約を交わしたことがあるメーカーであった。しかしその後この会社は有名なファンドの管轄下に入りしばらく没交渉となっていた。2004年頃に何かの伝手で彼らが稼働したばかりのスロバキア工場を見た。工場はオーストリアのウイーン空港から国境を越えてスロバキアに入り、1Hrぐらい走った場所にあった。スロバキア自身はEUには入っていなかったが、EU諸国にほぼ接した位置に工場があり、安い旧東ヨーロッパ国の人件費と欧州に近いという点で面白い場所だとその時思った。2020年代にその会社とは相手の米国・スロバキア、我々の日本・マレーシアを見せ合うところまでは行ったが、その後より良いM&Aの出現によりこの話は終わった。

次の拠点に東欧という選択は?