ジャニス・ジョップリン「Me and Bobby McGee」

 私の中学高校時代はいわゆるハードロック全盛時代だった。ともかくでかい音量で演奏するロックの曲を聞くと心がスカっとしたものだった。ロックと言えば、大体世間に背を向けて演奏する男性のバンドが多かったが、ある時ぶっ飛んでしまうような女性ボーカルを聞いた。それがジャニス・ジョップリンという歌手だった。彼女は一見すると、大変幼く見えてあどけなさの残るかわいい女性だった。ところがひとたび歌い出すと、そのしゃがれた声がロックして聞いている者全員を魅了せずにはいられない歌手だった。また生き方もその歌い方に負けない壮絶なもので、最後は麻薬にのめり込み、わずか27歳の若さで自分の命を絶つというものだった。そんな彼女のほとんどの曲は激しくシャウトするような歌い方だが、ある数曲に限ってはささやくように優しく歌いかける曲を残している。その中に私が最も愛する「Me and Boggy McGee」という曲がある。この曲のテーマは、既述のトム・パクストンの「流れ者」と同様「自由」だった。作曲者はクリス・クリストファーソンだが、ジャニス・ジョップリンはこの曲を別れたクリスから引き継いで歌ったようだ。歌詞の内容は「本当に自由になるというのは、何の束縛もなく失うものが何もないことなんだ」という非常にうんちくのあるものである。失うものが何もなく、本当に自由であるボビーが歌うブルースを聴くと気持ちが良くなり最高の幸せを感じると歌っている。ジャニスは1971年に自宅で亡くなっているが、その数ヶ月前にレコーディングされたこの曲はジャニスの死後全米ミリオンヒットチャートで1位になった。

今も思い出すジャニスのやさしい歌声

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