豊田勇造「高野グランドマンションのブルース」

 私は高校生になってブルースに目覚めた。まるで河内音頭のように同じ節回しを延々と続けるブルースにはまってしまった。そんな頃近畿放送(今の京都放送)の公開収録番組を見に行くと、豊田勇造という汚い?恰好をしたフォークシンガーが出演していた。どんな演奏をするのかと聞いていると、どうやら最近私がはまり出したブルースというやつを演奏しているではないか。しかも歌詞は自分の生活感をそのまま前面に出したものだった。曲名は「高野グランドマンションのブルース」というものだったが、京都の北西の高野橋あたりにある自分のぼろいアパートを自虐的にグランドマンションと呼び、そこからここまで皆に会いにやってきたといういわば「つかみ」の曲のようだった。たまたま節回しがブルースであったために、私はその曲に大きく影響を受けて最後はレコードまで買ってしまうはめになった。その後色々調べてみると、彼は私の高校の先輩にあたるらしく何となく他人とは思えない感情を持つようにもなった。この曲の中でブルースとして思う所があった。一つは彼のギター演奏だった。彼のブルースのフレーズはいわゆる「マイナーペンタトニック」という暗いイメージのある短調系のフレーズだらけだった。私も元々そちらから入ったので違和感はなかったが、こればかりではあかんと思い少しメジャー系フレーズの勉強をしていたので、堂々と「マイナーペンタトニック」一本で演奏する彼に少し驚いてしまった。またこの弾き方でどんどん早弾きをしていくと、最後は「津軽三味線」の早弾きフレーズに行きつくことに気がついた。こんなあほな事を思うのは私だけだろうか?

どろどろのブルースを演っていた頃の学校の先輩豊田勇造さん(左)

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