NSさんの思い出
私が入社した時期の社長がNSさんであった。元々入社前に会社の幹部の方と面談をした際に、その方から「うちの社長は法力がある人だ」と言われていたが、入社試験の最後にそのNSさんと面談することになった。その時の第一印象は、何か一癖も二癖もある妖怪のような迫力ある人が出てきたなあという感じだった。ただ優秀な経営者が皆そうであるように、目が優しくつい引き込まれそうなしゃべり方をする人だった。入社してからNSさんの話は朝礼やその他の会議で聞く機会があったが、他の幹部の人の話とは一味違う面白い話をされたので、NSさんの出席される場だけは欠席することなく出るようにしていた。NSさんはいわゆる「会社中興の祖」といった立場の人で、元々あった親会社から100人程度のメンバーで独立して、苦労して日経225に選出されるような大会社に育てて来られた人だった。時には競合他社から激しい中傷や攻撃を受けて会社の存続が危ぶまれるような時もあったが、その都度激しい闘志でしのいでこられたようだ。よく皆に言われたのは「君たちねえ、受けた恩と恨みは忘れたらだめだよ」というものだった。特にこの言葉を表すように、会社の会議室には自筆?の「執念」という文字が額に入れて飾られていた。会社にはそれぞれ自分たちが行く方向を示す方針というものが打ち出されているが、当時NSさんが社長だった時は、「文明の産物をつくる」というのがそれであった。まさに経営者らしい言葉だと皆で感服したものだった。NSさんはそんな自分の理念や方向性を皆に伝えたいという思いから取締役を離れる際に社員向けに一種の自叙伝を書かれた。今も私はたまに読み返すが、今読んでもNSさんの執念が伝わる。

「会社中興の祖」のNSさんの話は面白かった。